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【開催報告書】後編 Reuters Events主催Pharma Japan 2021: KISEKI治験の舞台裏 ~患者さんの想いが科学的に裏付けられたとき、イノベーションは生まれる~

Updated: Feb 22, 2022

【ライブQ&Aセッション】

【Q&A】

ここからはQ&Aコーナーです。前回同様、今回もパネリストの皆さまには、様々な質問に回答していただきました。


Q(長谷川さんへ)患者会は今後、どのように変化し製薬会社と関わりを持っていくとお考えになりますか?製薬会社との関係性という点からいかがでしょうか。

A PPI(患者市民参画)がどんどん進んでいくと思います。今回のKISEKI治験はその中の一つであると思います。KISEKI治験のように、先生方や、患者が企業とも関わりながら治験を進めていくという事例は、二つ目・三つ目とまた同じ事例を生んでくれると思います。


Q(地主さんへ)当初アストラゼネカのスコープではなかったKISEKI治験だったが、その戦略が覆った決定的な要因は何だと思いますか?

Aこの治験は患者さんのためになるとメディカルアフェアーズの立場から感じたこと、そして同時にその治験が多くの患者さんにとってまだ満たされていないアンメットニーズであったことが要因だと思います。

確かに、セカンドラインのT790M陰性に関しては様々な意見がありましたが、このKISEKI治験の実現を多くの患者さんが必要としていたことには変わりありません。また、脳メタのTKIのリチャレンジや治療抵抗性の遺伝子変異癌、T790の検査の精度も改善の余地があったことから、やはり今ここで私たちがアクションを起こさなければならないと決意しました。


ただ、今このKISEKI治験を振り返ると、未熟な点は色々ありました。患者第一で医療を届けるということは、医療業界全体での課題だと思います。



Q(中川教授へ)患者会の皆さまに自分たちもやりたいと思われたとき、どんなことを始めたら良いのかアドバイスを教えてください。

Aまずは患者さんが声を上げる、というのが一番大事です。ノウハウが必要となるので、医師主導治験を活発にやっている研究者や研究グループなど、実効性のあるコミュニティに関与している医師に相談するのが良いでしょう。そしてその声は研究者にも届きます。


また、いきなり製薬企業へアプローチするという方法もありますが、今の日本では難しいのが現状です。研究者や政府・行政に対し声を上げ、彼らを巻き込むことが大事だと思います。


Q(地主さんへ)まだKISEKI治験のような、患者の声を取り入れた治験を行ったことがない製薬企業に対し、患者さんの声を聞き実際に動くことの重要性についてもう少しお話していただけないでしょうか。


A私たち製薬会社の人間は、患者さんの目線にいかに合わせられるか、ということを大切にしなければなりません。

薬の開発や臨床研究は、患者さんにとってよい人生を送ってもらうために存在します。そのために我々は何ができるか、もっと深く考えることができるはずです。

患者さんの声を取り入れられる環境をつくりあげていくためにも、製薬企業全体で改めて考える機会があっても良いと私は考えています。そして我々が動けば、国を動かすこともできるかもしれません。


なかなか簡単なことではありませんが、一歩踏み出せなければ何も変わりません。

患者会や先生に協力をいただきながら、みんなで前進していきたいです。


Q(長谷川さんへ)患者会の立場から、希少癌の治療開発に関し、希望や野望があればぜひお聞かせください。

A 診察の現場でその患者さんに合った条件の治験を紹介されると、その治験を受けられるのは標準治療が終わった後のことです。情報提供は、均等に使えないものになっています。

現実に合わせていく活動を行っていきたいと考えています。


治療を進めるにあたり、先生から言われている治療を決めるやり方と、自分で調べて治療を決めるという二つのやり方があります。

しかし、このやり方以外にも「Shared Decision Making」(=医者と患者の共同意志決定)というポジティブな選択肢もあって良いと思うのです。

医師にも患者にも、この「Shared Decision Making」の認識がさらに広がってほしいです。



Q癌以外にも希少疾患は沢山ありますが、それらにもKISEKI治験のようなことを実施するためにはどうしたらよいでしょうか。

根本的なやり方は同じかと思います。日本では、がんの領域で医師主導治験が一番活発であると思います。難しいかもしれませんが、信頼のできる研究者に相談されることが最も良いと思います。


【パネリストたちからのメッセージ】

最後に、本日のパネリスト3名からメッセージをいただきました。


―中川教授より

私たちはもっと声を掛けていただければ、全力を尽くして頑張りたいと思っています。患者さんの声は非常に強いです。ぜひ声を上げてください。

そして企業の方にはその声を受け止めるPatient Firstを表現していただきたいと思っています。


―地主さんより

製薬協(日本製薬工業協会)でもお話させていただいたように、やはりこのような活動をどんどん知ってもらうことが重要だと思います。事例が増えれば、ノウハウもどんどん溜まっていきます。グローバルの戦略の関係などから、もちろんコンフリクトが起こることもありますが、その

コンフリクトをどうやって乗り越えるか、そこも含めて一緒に考えていきたいです。

ぜひ一度ここに参加されている皆さまからもご連絡をいただき、フレームを作っていきたいです。


―長谷川さんより

実は私は、身近にいる二人の親しい方に対し、彼らにマッチする治験をなんとかして実施させたいと思い、何とかできないかと頑張っています。

しかし、二人とも間に合いませんでした。亡くなった彼らの想いを繋げていきたいです。

その想いをもっと広げて、もっと多くの人たちと共に力を合わせて、治験の可能性を広げていきたいです。



【最後に】

KISEKI治験の舞台裏

~患者さんの想いが科学的に裏付けられたとき、イノベーションは生まれる~


KISEKI治験のような、患者さんの声をきっかけに始まった治験の事例は、これだけで終わらせてはいけないと私たちは考えます。

医師も、製薬会社も、患者さんも、もっと深く繋がり対話を通じて、皆で一丸となって医療の発展を目指していきたいです。


今回のイベントが一人でも多くの心に触れ、何かが変わるきっかけになれば幸いです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


Patientricity MedPartners代表 朝枝 由紀子







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