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JPPaC 患者中心の医薬品(PCM)プロジェクト キックオフセミナーPatient Engagement(PE)患者参画の黎明期にある日本で、今取り組むべきことは何か

開催報告書

NPO 法人 患者中心の医療を共に考え共に実践する協議会JPPaCの患者中心の医薬品(PCM)プロジェクトは、患者参画を”共に“取り組むことによって、”病気をもつ人に希望をかなえる“医薬品が生まれる環境つくりに貢献することをミッションとしています。

2022年3月13日JPPAC主催(協力:医薬品産業イノベーション研究会、一般財団法人ピーベック、PFMD)のもと、「患者参画の黎明期にある日本で、今取り組むべきことは何か」をテーマにセミナーを開催しました。

セミナーのプログラム:

JPPaC紹介

PCMプロジェクト紹介

患者参画アンケート調査速報

PFMD紹介

朝枝プロジェクトリードによるPFMDニコラス氏インタビュー

Q&Aセッション


そのセミナーで、製薬業界のPatient Engagement(患者エンゲージメントこと、以下「PE」)の日本導入プログラムの一環としてPFMDのエグゼクティブディレクターであるニコラス・ブルックさんにお越しいただき、PEを推進するにあたり、そのノウハウや知見をお話いただきました。


【パネリスト紹介】

インタビュアー:朝枝 由紀子 医師、Patientricity MedPartners株式会社 代表取締役 JPPaC会員、PCMプロジェクトリード

臨床医として診療に携わったのち、グローバルに社会貢献を果たしたいという思いからグローバル製薬企業へ転身。その後、医薬品産業の問題点を解決するためPatientricity MedPartners株式会社を立ち上げた。現在は診療と、同社の代表を務める傍ら、JPPaC理事長の畑中氏と共に、患者中心の医薬品(PCM)プロジェクトを立ち上げ、PFMD(Patient Focused Medicines Development)の日本導入プロジェクトを推進中。


インタビュイー:ニコラス ブルック氏 PFMDエグゼクティブディレクター

非営利団体シナジストの創設者。シナジストは集団行動によって重要な社会問題を解決するという目標を掲げる団体。また同氏は、患者との体系的な関わりを通じて医薬品開発のイノベーションの促進を目指すグローバルな共同プラットフォームPatient Focused Medicines Development(以下「PFMD」)のエグゼクティブディレクターとしても活躍している。


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■改めて、PFMD設立のきっかけや背景について教えてください。

PFMDは、異なる製薬会社のメディカルアフェアーズの3人から始まりました。数々のディスカッションを重ね分かったのは、患者エンゲージメントの定義は人によって様々であるゆえに断片的であり、医薬品のライフサイクル全体において意義のある体系的な患者エンゲージメントがないということ。また、規制当局、HTA(医療技術評価)、保険者(支払い側)、製薬企業、などステークホルダーごとに取り組みが縦割り化していることも問題でした。そこで私たちは、体系的な患者エンゲージメントの浸透を目指しました。


最初にぶつかった壁が、患者エンゲージメントは何かという事。その定義づけをする代わりに、成功事例に焦点を当てることにしました。臨床試験の患者エンゲージメントとして優れたツールを特定し、マップ作製し、その共通基盤を見つけました。

そして最初に開発したのが、7つの品質基準です。製薬会社 患者さん 規制当局が共に開発したもので

すべての人のニーズが反映されています。共に行える150以上の活動に基づいた、ノウハウ(方法論)ガイド、臨床試験のデザイン方法などです。


実はこの7つの品質基準を定めるにあたり、私たちはかなりの時間をかけました。

チームが掲げる目的や目標を共通認識するためには、議論を重ね、忌避なく意見を交わし、互いを理解し合う必要があります。一般的な企業ではそのような時間をしっかり設けるのが難しい中、PFMDは未来に向けた強力な基盤作りのために、非常に多くの時間を費やしました。


PFMDのガバナンスの特徴は、所属団体の構成比。素晴らしかったのは、製薬会社が、患者さん主導でなければならないと言ってくれたこと。製薬会社が最大40%、患者団体が最大40%、残りの20%は規制当局などその他のステークホルダーが所属し、患者さんの割合が十分に配慮されていることです。


■PFMDが開発したツールは、実際にどのように製薬会社で活用されているのでしょうか。

事例は様々です。例えば、GSK社は患者エンゲージメントを行う際の関連する全ての社内実施要綱の見直しに利用。Novartis社は、見直しだけでなく患者エンゲージメント活動の中でもそのまま使用しています。ベルギーに拠点を置く小規模な製薬会社ガラパゴスは、ハウツーガイドや品質ガイダンスを使って、自分たちの社内独自のバージョンを作ったようです。 ファイザー社は品質ガイダンスを活用し、全ての患者エンゲージメント活動の評価と公表を試みています。

そしてこれらのツールは、特定の国や特定の希少疾病の患者団体などの制限は設けておらず、誰でも自由にアクセスできます。


■PEOFのプログラムが成功に至った要因を教えてください。

様々な立場や経験を持つ人が集まり、十分にディスカッションしあえる環境があると思います。PEOFは、PFMD、EUPATI、EPFが共催のもと執り行われるフォーラムです。発表の場ではなく、対話し交流する場として設けており、患者理解に向け専門知識を持つ人や患者体験を持つ人がディスカッションを行います。業界知識がなくても、バイアスのない生の体験を共有する事が出来ます。業界知識に関わらず、誰でも歓迎される場です。


■現在PFMDが視野に入れているアジア展開について教えてください。

私たちがこの数年間で活動してきたのは、アメリカやヨーロッパが中心でした。しかしこの2年間、アジアの規制当局の拠点であるCenter of Regulatory Excellence(シンガポールDuke大学のCORE)の活動に携わった経験から、アジアの国の調査や各国のニーズを理解することができました。PFMDは様々なツールを開発してきたので、それらの情報を共有し、それぞれの国の状況やニーズに応じて適用させていくこと。

特に日本はアジアの中でも非常に速いスピードで動いています。国ごとの現状やニーズ、スピード感を理解しながら、アジア圏内の患者エンゲージメントと向き合いたいですね。


患者エンゲージメントの普及あたりキーポイントとなるのは「共創」です。

一人でも多くの人々が議論に参加し、それぞれが持つ知識や資材、経験を寄せ集めれば、私たちが目指す未来像にまた一歩近づきます。共創は、長期的な成長のためには必要不可欠な要素と言えるでしょう。


■今後のPFMD全体の中期的、長期的な計画や目標について教えてください。

3つのコアゴールがあります。

1つ目は、患者エンゲージメントのための新しいツールや方法論を開発し続けること。デジタルヘルスや医療システムも含む、医療のあらゆる側面で患者中心となるような社会を実現したいからです。

2つ目は、「Enabler」(イネーブラー:実現するための要因)への取り組みの開始。例えば患者エンゲージメントに関するイベントやリソースを見つけるためのネットワークを、今度は日本でも取り組めるようになりました。これもまさにイネープラーです。

3つ目は、デジタルヘルスにおける患者エンゲージメントです。実はこの分野ではまだ患者エンゲージメントは進んでいません。デジタル時代である今だからこそ、その課題をしっかり受け止めたいですね。


デジタルヘルスにおいて、優先して取り組みたいことが2つあります。1つ目は患者エンゲージメントと患者経験のデータを組み合わせて、データ収集・解析・そこから意思決定してゆくこと。2つ目は、患者エンゲージメントのモニタリングと評価、そしてベンチマークです。


■最後に、日本に期待することや希望をぜひお聞かせください。

患者エンゲージメントは、欧米では広がっているもののアジアやアフリカ諸国にはまだ浸透していません。そのような現状の中、日本は先陣切って患者エンゲージメントについて始めてくれました。これはとても素晴らしいことです。欧米が進んでいると言っても、まだ学ぶべきことは沢山あります。これから先課題や失敗も見えてくるでしょう。しかし日本は、欧米諸国と同じステップを歩むのではなく、欧米諸国での教訓や解決策を踏まえ、近道して進んでも良いと思っています。そうすれば、よりスピーディーに患者エンゲージメントを実現できることでしょう。


患者エンゲージメントを米欧諸国より遅れて始めるということを、どうか恥ずかしがらないでください。きっと日本は良い方向に進み、他の国々の模範になると思います。

ぜひ、共に議論のテーブルに着き患者エンゲージメントを実践してみてください。


報告書作成  2022年4月 JPPaC PCMプロジェクトリード 朝枝由紀子


PCMプロジェクトの患者参画Patient Engagement PEの定義: 患者・家族や支援者・市民が、医薬品のライフサイクル全体にわたり、いろいろな関係者と対等なパートナーとして、意思決定に参加し、患者や市民にとって有用な創薬・育薬に貢献すること。


PCMプロジェクトキックオフセミナーのビデオとアンケート結果は、JPPaC ホームページを参照ください。


PCMプロジェクトにご参加いただくボランティアを募集しています。

ご関心のある方は、info@jppac.or.jpまでご連絡ください。



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